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「この村にはな、昔から妖怪が住んどるんだ」
これが祖母の口癖だった。父の実家へ行く度に僕は祖母に、いるはずもない一つ目の鬼の殺戮行為や、美しい龍のお姫様の恋の話を朝から夜まで聞かされていた。そりゃもう、永遠と。
小学生の頃まではその類の話に対し、目を輝かせて聞いていた僕も、さすがに中学になってからは軽く聞き流す程度になった。サンタの正体が父親のように、妖怪の正体も現実の何かなのだ。と、勝手な解釈を自分に言い聞かせる分、少しは信じていたかったのだろうが。
いないものは、いない。実際自分の目で確認できるもの以外は、僕はきっと信じないだろう。母親譲りの頑固な性格故の結論だ。
それに、祖母の家には幼稚園の頃から毎年、お盆や長期休暇の度に行っているが、それらしいものを見たことがない。当たり前だが。
よって、どんどん僕の心も汚れのない純粋な幼少期に比べ、醜い現実を知った哀れな一人の都会人として育っていった。
高校に入ってからは、祖母の家に行くことすら無くなっていた。部活や勉強で忙しくなったのだ。学校の友人と遊ぶのも楽しかったし、本音はきっと祖母より友人を選んでしまったのだろう。
そして、高校1年の冬。
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