①プろろーぐ

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 祖母が亡くなった。  95歳と、平均よりも長生きをした。  葬式に行ったときに見た、祖母の表情は、朗らかな微笑みを浮かべていた。気のせいだろうと両親に言われたが、少なくとも僕にはそう思えた。  祖母の死は、僕に悲しみを植え付けると同時に、周りからの嫌悪の視線を産み出した。理由は簡単だ。  遺産についての遺書である。  祖母はその昔、名のある家系の一族の子孫だったそうだ。つまり、僕もその血筋の一人らしい。実感はないが。  今となっては落ちぶれた、とまではいかないが、力を失ったのだが、金銭面では裕福な方なのだそうだ。  極論を言うと、祖母の少なからず膨大とも言える遺産を、全て僕に相続させたのだ。  僕は確かに他の従弟より、祖母に可愛がられていたと思うが、遺産を全て相続させるまでの事をした覚えがない。  つまりだ、当事者の僕が疑問に思う事を、周りの親戚が不思議に思わない訳がない。その日から僕の家族は、親戚に敬遠されるようになった。
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