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祖母の実家に引っ越して来て、早いもので一週間が経とうとしていた。
茶の間の時計が、大きな音をたてて、午後七時を示す。春の少し肌寒い夜に、僕は夕食の支度をしていた。
・・
二人分の夕食を。
「おーい、鈴也(スズヤ)ぁ、飯まだかー」
鈴也とは、僕の名前である。守山(モリヤマ)鈴矢。父が、鈴の音のように、周りの人を和ませるような人になって欲しいという意味で付けてくれた。
そして、僕に夕食の催促をしてくるうるさい馬鹿は臣影(オミカゲ)。
「ちょっと黙ってて。すぐ出来るから」
「座敷わらしは待つのが嫌いな種族なんだよ。早くしろ」
自称、座敷わらしである。
***
臣影と初めて会ったのは一週間前。僕が引っ越して来た当日のことだ。
茶の間で音楽を聴いていたこいつは、僕の存在に気づくや否や、とてつもないしかめっ面で睨んできた。しかも、お前は誰だ、なんて言ってくる。
僕にとっては、お前の方が誰なんだと言いたい所なのだが、とりあえず喧嘩は避けたかった事から、この家の新しい主だと言った。
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