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「でも、彩子も彼氏いないでしょ？」
「五月蠅い！ あなた達と違って機会がないだけ！」
「機会ってあれっすか？ 英語でチャンスって奴ですよねぇ？ ぶはっ！ お前にチャンスなんて――――」
「それ以上言ったら、どうなるか…………分かるよね？」
「――――あるある！ 大いにあるから喉元に突きつけたコンパスを片付けろ！」
舌打ちと共に彩子がコンパスを片付ける。
あれが彩子の残念なところだよなぁ……。
実際のところ彩子は顔が悪いわけでも、スタイルが困った事になっているわけでもない。
問題は性格だ。
彼女は男に勝る凶暴性を秘めているのだ。
暴力に移ろうとすると手が付けられなくなるその性格はドＭにしかモテない。
しかし彼女はドＭのような奴は気に入らないようで……。
つまるところ彼氏はいないようなのだ。
性格さえ直してくれたら、僕が婿に行ってもいいと言うのに……。
「残念だ！」
「私の顔見て、何言ったのかな？ 英悟……！！」
「ははは！ 彼氏ができないのは性格が原因だろうなって―――ごめん間違えた！ 彩子は凶暴で手が付けられない人だ！ だからカッターナイフを片付けて！」
「言い方変わってないじゃない！ 英悟ぉ！！」
「えぇ！ 何で！？」
カッターナイフを片付けようとはせず、さらに力を込めてきた。
晴彦の時には片付けたというのに……。
これが世に言う理不尽だと知った僕だった。
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