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右手の林から飛び出した巨大な影が、彼らの行く手を遮った。
体長3mはあろうかという巨大な狼――ダイアーウルフと呼ばれる悪魔の狼だ。
魔狼は低く唸りながら、三人の前に立ちはだかる。
「どけって言って、どく相手じゃねえよな」
バーン・フリッツが、すかさず剣を抜く。
と、背後からガド・グロスフィードの悲鳴に近い声が上がった。
思わず振り向いた二人は、自分の目を疑った。
彼らの左後方に、巨大な影がもう一つ――ダイアーウルフは一頭ではなかったのだ。
それだけではない。
逆側の林から、さらにもう一頭が姿を現す。
計三頭の魔狼に完全に囲まれたこの状況は、圧倒的に彼らの不利であった。
これではまず、勝ち目がない。
逃げ切れる可能性はないに等しかったが、いちかばちか、強行突破する他ないか――。
緊迫した空気に、誰もが押し黙っていた。
ゴクリ、と唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。
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