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遠藤快は生み出されてきた神庭時雨、陸舘空、白崎亜弥を見て構える。それと同時に伊津野が遠藤に話しかけてきた。
「用意。」
「ああ。」
伊津野は右の手の平を返す。
『紛擾(ターン・オーバー)』
伊津野は部屋内の全員の能力を交代させる。遠藤は『*(アスタリスク)』で程度を弱めてその交換会から抜け出した。
伊津野に拓正の能力が来たために『愛国心の絆(パトリオット)』が切れ、陸舘達は姿を消した。その直後に能力の効果が切れる。
「この能力は調整が難しいねえ。五秒が限界か。」
「それだけでもあの能力を失くせたのは大きい。」
遠藤は拓正を見る。拓正は遠藤を見て笑った。
「快!元気にしてたか!」
「うるせえ。その元気をたった今てめえが終わりにしようとしてたんだよ。」
「快~、父親に向かっててめぇとは何だ。お父さんと呼びなさい。」
「うるせえ馬鹿野郎。さっさと死ね。帰ってっくんな。死ね、クズ。」
「酷い…。」
拓正は泣き出すが、伊津野と遠藤は冷ややかな目で拓正を見ていた。
同時、笠松終は神庭達と戦った部屋を出る。そして直ぐに新たな敵を見た。
「…創。」
「父さん。やっぱりいたんだ。」
笠松創は父親を見る。父親は部屋を指さし、通路の壁に背を付けた。笠松は急いでその部屋の中に入る。その部屋には片桐がいた。
「暦!」
笠松は片桐に駆け寄って力強く抱き締める。終はドアを閉めて息子夫婦を見た。
「創、能力の上限をリセットしたな。その影響は梶本から聞いているか?」
「…うん。知ってるよ。むりやり能力の上限を戻そうとするなら体内時計は一生狂ったまま。体内時計はリセットされず、簡単に言えば、どんなことをしても二度と能力上限はリセットされなくなる。」
「しかし、それも正解なのかもしれない。この戦いが終わればの話だが、四大起源が必要とされない時代が来れば、争いの火種になるものは持たない方が良い。」
笠松は片桐の額にキスすると立ち上がって終を見た。親子の眼差しはいたって穏やかに、静かに互いへ殺意を向けていた。
「初めての親子喧嘩になるね。」
「息子に負ける気はしないがな。」
「それなら父さんに認められるよう頑張るよ。僕はもう、一人の大人だってことを。」
遠藤快と笠松創は互いの父親と最後の親子喧嘩を始めた。
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