28.雲散霧消 智者一失 正悪

11/62
前へ
/3000ページ
次へ
現世の遠藤拓真は自分の家で一人固まっていた。 自分が遠藤と桜の父親を殺したことを自分の口から言えなかったことに後悔していた。 藤原は拓真の顔を覗き込む。 「バーカ。」 「ああ、俺は馬鹿だよ…。」 「そういう意味じゃないし。分かってるのに何もしないのがバカなんですよ。今の拓真は馬と鹿以下です。親として、人として失格です。多分、快さんも楓さんもあなたのことを父親だと思ってますよ。だからこうやって快さんはあなたを頼るじゃないですか。」 藤原は拓真の尻を蹴る。 「子供に頼られてるのに何もしない親がどこにいるんですか!」 拓真は藤原に背中を押されるように玄関のドアに手をかけた。 「…ああ、分かってるよ。俺はあいつらの親だ。」 拓真は玄関のドアを開ける。その先には灰色の廊下が続いていた。 拓真は本部に入る。 「せめてもの罪滅ぼしだ。」 拓真は一班室に向かった。 一方、第一の世界の遠藤拓真は突然の遠藤達の出現に頭を悩ませ一人公園のベンチに座っていた。 「あー、なんでああいう輩が来るもんかねえ…。俺は一体どうすりゃいいんだよ。」 拓正と拓真の性格は非常に酷似していたため無理にキャラを作らなくてもよかった。しかし、拓真の体を乗っ取ったことを聞いた桜紅葉は拓真との婚約を継続しているものの、家に篭り続けていた。 「…やっちゃいけねえことをしたのは分かる。だけど、俺が死んだらそもそもの意味がねえ。」 「関係ねえ。死ねよ。」 拓真は突然の声に驚きながらベンチの後ろを向いた。 そこには遠藤と陸館が立っていた。 「てめえ、近付くなって言っただろ!」 「近付くなとかじゃなくて、腐っても(いや実際にはとっくに腐って腐敗臭漂ってるけど)お前は俺の父親なんだ。父親らしい行動はとってもらうぞ。」 「そもそもてめえが俺の息子って言うのが…」 遠藤は拓真の額に手を置く。 『*(アスタリスク)』 突然拓真の心の中で何かが軽くなった気がした。 「今、親父の能力の程度を下げた。これで俺が遠藤家の末裔ってのは証明完了。それでもう一つ、これはまだこの世界の誰にも言ってないことだ。」 遠藤は意識の中で狩人と体の所有権を変えた。 「我が名は狩人。しかし、今のお前には初めましてという言葉が合うか?」 狩人は不敵な笑みを浮かべて立っていた。
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

847人が本棚に入れています
本棚に追加