2.纏 腐

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杉原は続けて話す。 「田中の身は俺達が預かっている。その辺は安心してくれ。」 (まあ、そう言って安心するわけないが…) しかし遠藤の反応は意外なものだった。 「良かった。」 杉原はその言葉に驚いた。 「何故そう思う。」 「いや、あんなことがあったから無事でないと思ってました。」 杉原は遠藤に顔を近づける。 「お前を殺そうとした奴だろ?」 遠藤は首を横に振った。 「確かにそうですけど、俺は昨日の田中より今までの田中を信じます。たとえその友情がごっこでも。」 杉原は遠藤の言葉に偽りがないことを感じ、笑いだした。 「あーおもしろい。遠藤の頭の中を見てみたいな。」 遠藤は少し機嫌が悪くなった。 突然杉原は笑顔を消して遠藤を見る。 「なあ遠藤。俺達の仲間にならないか?」 遠藤は杉原が発した言葉の意味が分からなかった。 得体の知れない奴が得体の知れない組織に勧誘しているとしか思わなかった。 ほうけている遠藤を見て杉原は言う。 「とっさの事で悪かったな。まあ、どうするかは来てからでいい。」 (………え?) 「え、ちょっと待てください。話が見えません。誰がどこに?」 遠藤は反論したが杉原は軽く言った。 「すまない。既に呼んである。」 遠藤は立ち上がる。 「ちょ、何をですか!?」 すると遠藤の後ろで物音がした。 「ほら来た。」 杉原が言う前に遠藤は振り返った。 机の引き出しが開き、そこから手が現れる。 「まさか、ドラ○も…」 そこで遠藤の視界は暗くなった。 「ご苦労様。」 ドラ○もんもどきに杉原は言う。 「連れてけ。」 冷静な顔で命令した。 数分後、桜は薬とお湯を持ってきた。 「あれ?二人は?」 部屋には誰もいなかった。 机の引き出しが開いていることには気付かなかった。 ある男が鼻歌を歌いながら自転車をこいでいた。 空を見上げると鳥が群れをなして飛んでいた。 男は右手で銃の形をつくって鳥を撃つまねをした。 「バーン。」 男は満足そうに去っていった。 数秒後、一羽の鳥が落ちてきた。 その鳥は首筋に赤い斑点のようなものがあり、その部分と周囲が腐っていた。 十分後にはその鳥は骨だけになっていた。
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