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「音?」
「ああ、音だ。こいつは特殊な音で相手を操作することができる。遠藤がこの状況であまり驚かないのは音の力で遠藤の脳を麻痺させているからだ。」
遠藤は納得する。
「俺達は人が持つ能力を集めて保存するのが目的だ。」
杉原が次に言いかけた時、女の子が割って入ってきた。
「よくもそうベラベラと私の能力をバラしやがって。この○○○の△△△野郎が。」
遠藤またもや硬直。
しかし杉原は、
「うん、知ってる。」
(ス、スルーした!)
遠藤は杉原を少し尊敬した。
「私にはしっかりとした名前があるの。沙樹下仁美(さきもと ひとみ)っていう名前が。あんたなんか□□□に☆☆☆になって◎◎◎になればいいのに。」
「ハハハ、それはちょっと無理だな。」
またもやスルー。
「本当にうざいわね。」
沙樹下はそう言って去っていった。
「そういえば田中はどこにいるんですか?」
遠藤は杉原に聞いた。
「ほう、これは驚いた。沙樹下の力で記憶は消したと思ったんだけどな。」
杉原は当たり前のように言う。
「本当は何か反論を言いたいですが何も感情がわかないです。」
(思い出なんて軽くなくなるんだな。)
「まあまあ、その話は後にするとして、見てもらいたい奴がいるんだ。」
遠藤が頷くと、向こうの方から綺麗な女性が走ってきた。
「杉原さん!」
女性は杉原の所に来るなり抱きついた。
「元気だったか風香。」
杉原にとって挨拶は「元気だったか」らしい。
「紹介するよ。この少年が遠藤快。電話で話した人だ。」
遠藤が困惑していると、風香という人から声をかけられた。
「初めまして。水樹風香(みずき ふうか)といいます。この度は夫がご迷惑をおかけしました。」
水樹風香、ザ・自然な名前だ。
遠藤はある言葉が引っかかった。
「夫?」
杉原が代わりに説明する。
「俺達は夫婦だ。」
遠藤は落胆した。杉原に負けた気がした。
「えっ、ここにいるってことは何か能力があるんですか?」
遠藤は気を取り直して聞く。
「まあ、そのうち分かるだろう。」
杉原は何故か水樹の能力を言おうとしない。
そのとき、サイレンが鳴った。
「仕事だ、行ってくる。」
杉原は嬉しそうな顔で走っていく。
遠藤は水樹と二人きりになった。
水樹は遠藤の方を向いて微笑んだ。天使のような笑顔だ。
「じゃあ案内を続けましょうか。夫にもそう言われているので。」
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