2.纏 腐

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水樹は杉原に二つ、お願いをされていた。 一つは自分の隊の人達に会わせること。そして二つ目は遠藤に自分の能力を自覚させることである。 (二つ目を大瀧さんがこんなに軽く言うなんて。) 大瀧は案内の目的を知らない。 遠藤が唖然としていると、杉原が足早に近づいてきた。 「滝!お前少しくらい空気読めよ!せっかく水樹がゆっくり言おうとしているのを邪魔して。」 どうやら大瀧は杉原に滝と呼ばれているらしい。 「は?んなもん知るか!てめえは人に気い使いすぎなんだよ!」 「それの何がいけないんだ!」 「うるさい!」 突然水樹が叫んだ。 遠藤を含め三人が体をびくつかせた。 「うるせえって何回いやぁ分かるんだ!そんなに喧嘩してぇんなら表に出てやれや!」 辺りが静まる。 水樹は人が変わったように怒鳴り散らす。 遠藤がゆっくりと大瀧と杉原を見ると、顔面蒼白になっていた。 「す…すみませんでした。」 「分かってくれればいいんですよ。」 遠藤が水樹の方を向くともう元の笑顔に戻っていた。 「それより、遠藤さん。突然の事で驚いたかもしれませんが、そういうことです。あなたには予知能力がある。その事を分かってほしかったんです。」 「いや、俺にはさっきの豹変ぶりのほうが…」 そこまで言ったとき、誰かに肩を掴まれた。 振り返ると杉原と大瀧が震えながら首を必死に横に振っていた。 水樹は不思議そうにこちらを見ている。 「な、何でもないです…。」 それしか言えなかった。 数秒間の沈黙が続いた後、杉原が口を開いた。 「そうだ。滝、上からの指令だ。出かけるぞ。」 「は?どこに?」 「それは移動中に話す。」 二人で話しているところに遠藤が割って入る。 「俺も連れてってください。」 大瀧が不機嫌な顔を露わに出し、杉原は苦い顔をした。 「俺も行きたいんです。自分の今いる状況を知るためにも。」 杉原がなだめるような言い方で説明してくる。 「遠藤には悪いがそれは無理だ。今、お前が平静を保てているのは沙樹下の音の力があるからだ。沙樹下の能力範囲はせいぜいこのフロアぐらいだな。お前がここを出るとなると、音の効果が消えて全ての感情が返ってくる。最悪、ショック死なんて事もあるんだ。」 遠藤は息を呑む。 決心をつける為に杉原の方へ一歩前へ出る。 「それでも行きたい。信じてください。」 遠藤は杉原を真剣な眼差しで見つめた。
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