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遠藤と杉原が睨み合っていると大瀧が話しかけてきた。
「まあ、遠藤も本気なんだし連れてってやりゃいいじゃねえか。」
杉原と遠藤が大瀧の方を向く。
「滝は余計な事言うな!」
「余計とは何だよ。俺は遠藤の気持ちを汲んで言ってるんだぜ。」
(大瀧さん…。)
遠藤は大瀧を尊敬し始めるとともに、なぜ自分を助けてくれるのか分からなかった。
大瀧の顔を見るとニヤついていた。
「そこまで言うならいいよ。」
遠藤が顔を上げると二人の話が終わっていた。
杉原が遠藤の方を見て言った。
「真剣さに免じて連れていこう。その代わり、約束がある。俺達を『信じろ』。今は意味が分からないと思うが、絶対分かる時が来る。」
正直遠藤には意味が分からなかったが、一応返事はした。
杉原がその反応を見て頷く。
「良かったな。」と大瀧が遠藤の背中を叩いた。
「じゃあ今すぐに出るからついてきてくれ。」
「どこにですか?」
遠藤が杉原に聞き返すと大瀧が言ってきた。
「決まってるだろ。移動する為に車に乗るの。分かりますか?」
挑発気味に言ってきた為遠藤は苛ついたが顔には出さなかった。
大広間のような場所を抜けると大きな車庫があった。数百台はある。
「お、いつも早いね~。ご苦労さ~ん。」
車庫にはボサボサ頭の男がいた。
「よ、和志。元気でやってっか?」
大瀧が桜庭の所に行く。
「お前よりは元気だという自信はあるな。それより聞いてくれよ!実はな…」
「ああ~…その話は後で聞くよ。今度飲みに行くか。」
馴染めない遠藤を見て杉原は遠藤に桜庭について説明した。
「あいつの名は桜庭和志(さくらば かずし)。この車庫の管理人だ。滝とは気が合うらしい。」
へえ~、と思っていると桜庭が杉原の所に来た。
「大瀧から聞いた。人数は三人、無線付きでいいんだな。」
「ああ、そうだ。」
「ちょっと待ってくれ。」
桜庭はそういうと、目を閉じた。
数秒後、突然目の前に一台の車が止まった。
驚いている遠藤に杉原が耳打ちする。
「桜庭の能力は特定の条件をクリアした物体を瞬間移動させる事だ。」
沙樹下の音の力の御利益で妙に納得出来る。
杉原が運転席、大瀧が助手席に乗り込み、続いて遠藤が乗ろうとした時、桜庭に話しかけられた。
「君の事は皆から聞いてる。で、俺からのアドバイス。これから起こる事全てを理解しろよ。」
「は、はあ…。」
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