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あれから三十分、遠藤は両手で頭を抱えたまま動かない。
大瀧があくびをする。
そのまま杉原に聞く。
「なあ、そろそろこいつ置いてってさっさと仕事を済ませようぜ?」
杉原も何かを待っているように動かない。
大瀧は深くため息をついた。我慢比べは得意な方ではない。
大瀧は動かぬ杉原に「先に行ってる。」と言い、車を出た。
車の中は不気味なほど静かになった。
「ったく。杉原の野郎、何で無駄に時間使ってんだよ。」
大瀧は小石を蹴飛ばしながら街道を歩いていた。
第二班の話ではこの付近に能力者が現れたというのだが平和な街並みだ。
大瀧は軽く伸びをした後、軽く首を左右に曲げ、息を吐いた。
「さて、どうするか。」
大瀧は辺りを見回し、近くにあった喫茶店へ入った。
店員にコーヒーを頼み、窓側の席で外の様子をうかがった。
(ったくどこにいんだよ…。)
ぼーっとしているといつの間にかコーヒーが席に置かれていた。
(あれ、いつの間に…?)
突然、外の方から悲鳴があがった。
「くそっ、」
大瀧は千円札を置き、急いで店を出た。
駅の近くで人だかりができていた。
大瀧は人だかりを分けて一番前に出た。
そこにはカラスに喰いあさられ、もう白骨化しかけていた死体があった。
「やられた!」
大瀧は愕然としたが、がっかりする前にしなければいけない事があった。
野次馬共を黙らせる-
大瀧はポケットから手榴弾(的な物)を取り出し、白骨化死体に投げた。
球は光を放ち、野次馬の目を一時的に眩ませた。それと共に白骨化死体は消えて無くなった。
大瀧は球を拾い、車に戻った。
「せっかくの見せ物を潰しやがって…マジあいつぶっ殺す!」
くちゃくちゃとガムを食べながら自転車にまたがった男が憎々しく言った。
(杉原に何て言おうかな…。)
大瀧はとぼとぼと車に戻っていく。
下を向いたまま車のドアを開けると車の中は笑い声であふれていた。
大瀧が物を言えないでいると杉原が気付き、話しかけてきた。
「おお、滝帰ってきたか。早く乗れ。」
「どうなってんのか説明をくれ。」
大瀧は状況が掴めない。
「いや、案外遠藤が面白い奴でな、ハハハハ。腹がいたい。」
少し理解した。遠藤が目を覚ましたらしい。
「気が合っていいね~、お二人さん。」
大瀧はおどけて言った。
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