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杉原が笑い顔を必死にこらえながらきく。
「どうだった?」
「あー…すまん。逃がした。」
大瀧がそう言うと遠藤と杉原がまた笑い出した。
「何かおかしい事でもあんのか。」
イラつきながら言う。
「本当に当たってるとはな。予知って凄いな。」
杉原の意図するところが見えない。
杉原は説明した。
大瀧が車から出る時のドアを閉める音で遠藤は起きた。
「大瀧さんを早く行かせなきゃ。し、死体が…」
遠藤の第一声がそれだった。
杉原が詳しい話を聞くと遠藤はずっと見ていたと言った。これが遠藤の能力だと遠藤もようやく自覚した。
その後は寝て起きての繰り返しで、未来を見ていた。
「これで分かった事がある。」
杉原が大瀧に言う。
「いうなれば長所と短所だ。長所は自分が知りたい人物・場所・時間が大雑把ではあるが指定出来る事。短所は単純に寝ないといけないということと、自分の知っている者しか予知が出来ないこと。時間を五回ほど計ってみたが、どういう内容でも十分前後かかる。」
杉原の話を聞いて疑問に思う点があった。
(俺、そんなに長く外に出ていたか?)
知らぬ間に時が流れる事もあるため、大瀧は声に出さなかった。
「そんで、遠藤は自分を自覚しているんだな。今までの事も…恐怖も。」
その問いには遠藤が応えた。
「はい、大丈夫です。俺のモットーは【過去より現在(いま)】ですから。」
意味は今ひとつ分からないが、普通に戻ったのだから良いのだろう。
杉原と大瀧は話し合って一度本部へ帰ることにした。
暗い部屋。漫画やゲームが床に散乱し、いたるところにカップ麺や弁当の空き箱が落ちていた。
テレビの中では流行りのお笑い芸人が漫才をしている。
そのテレビの光に照らされている男が呟いた。
「早く帰りてぇ。」
男は窓のカーテンを開けた。
目の前を隕石が通り、辺り一面暗闇の中、木星が見えてきた。明らかに別世界だ。
本部に着いた三人は沢山の仲間に囲まれた。
見出しを付けるなら【前代未聞!遠藤まさかの奇跡の生還!】だろう。
それほど遠藤が凄い存在であることを示し、逆を言えば沙樹下の力の高い信頼度を証明している。
だが、沙樹下は遠藤が注目されているのが嫌なのか大勢の中には居なかった。
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