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「プラスでもマイナスでもない。つまりゼロ。これだけは特殊。遠藤君は私達の仕事目的について聞いた?」
「はい、杉原さんから。特殊能力を閉じ込める事だと聞きました。」
沙樹下が頷く。
「うん、まあそうね。でもね、目的はもう一つあるの。さっき私が言ったゼロを持つ人を捕まえる事。そしてその能力を完全にこの世から抹消する事。」
「え、それは別に一つの目的として入らないんですか?」
「ううん。杉原はその後に保管するだか何とか言ったはずよ。あいつ馬鹿なくせにそういうことだけは覚えてるのよ。まあ、要するに保管は能力をとっておく。【抹消】は本当に消し去る。」
「え、どこにですか?」
沙樹下は後ろを振り返る。
「中央に高い人工塔があるでしょ。その中に能力があるの。どうやってかは…ああ、後で話すね。」
遠藤が前を見ると目の前に大きな扉があった。
そこで遠藤は当初の目的を思い出した。
「あ…連れてきてくれたんですね。ありがとうございます。」
遠藤は沙樹下に礼を言った。
「別にいいのよ。じゃあ後でね。」
沙樹下はそういって帰っていった。
遠藤は大きく深呼吸をした後、ドアをノックした。
ドアが内側にゆっくりと開く。
白い空間に椅子と机が二つずつ、そして一人の老人が椅子に座っている。
「さあ、腰掛けたまえ。」
男は優しい声で言った。
遠藤は椅子に腰掛ける。
青い光に男の顔が照らされる。
(老人…?)
「私は小野田和則(おのだ かずのり)、この組織を指揮している。君とは一度会いたかったよ。」
「はぁ…。」
「話したい事があるけれども君の方がありそうだ。君から先にどうぞ。」
(ペラペラと喋るな…。)
「はい。先ずここはどこですか?」
「それは広い意味でかな。ここは警察のトップが仕切っている極秘公共企業だ。ここの給与は国からの支給による。ここの場所は国会議事堂の地下。まさに国がらみの秘密結社だ。」
頭が痛くなってくる。
明らかに非現実的な話だ。小野田は納得しただろうといわんばかりのどや顔で遠藤を見る。
「それで話なんだが…」
遠藤は今言われた事を頭の片隅に置いて、小野田の話を聞く。
「君にここで働いてもらいたいんだ。」
(え?え??えええええ!?)
遠藤の頭はショートした。
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