2.纏 腐

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遠藤は安堵の溜め息をつく。 (こんな状況がバレたら何て言えばいいんだ…。) 「おい。」 大瀧に呼ばれる。 「あれ、お前のか…」 「違います。」 遠藤は即答した。 「俺まだ何も言ってな…」 「どうせ『あれ、お前の彼女か?』ですよね。もう慣れてますから。」 遠藤はそっけなく答える。 大瀧は何も言わずにまた歩き始めた。 遠藤は遅れないようについていく。 二人が歩き始めた時、大瀧が自転車に乗った男と勢いよくぶつかった。 (来た!) 「おい、おっさん。怪我しちまったんだけど、どうしてくれんだ?」 遠藤は【あたりや】というのを初めて見た。 大瀧も状況を理解し、口論へともっていく。 「おいおい、それはねえよ。第一俺もぶつけられたんだぜ。おあいこだろ?」 「ふざけんな!お前には慰謝料払ってもらうからな!」 「嫌と言ったら?」 「…ちょっとこっち来い。」 自転車男は大瀧を連れてどこかへ行く。 その際、大瀧がこっそり遠藤を手招きした。 結局、大瀧と遠藤の二人で廃墟に行った。 「ここなら人も来ねえだろ。」 自転車男はそう言って、遠藤を睨む。 「用があんのはてめえだけだ。もう一人は向こう行け。」 男はそう言って遠藤を下がらせた。 「名前は?」 「大瀧詠一だ。そっちは。」 「谷川瞬。」 「で、俺に何か恨みでも?」 谷川は憎々しく言った。 「俺の傑作を壊しやがったな!」 大瀧は谷川の言っている意味が分からなかった。 「なんだって?」 「あの白骨化死体だよ!暇つぶしにホームレス一人殺して、見せ物にして楽しんでいたのに…。それをお前が消したんだろうが!」 遠藤は背筋が凍った。 しかし大瀧の様子は変わらない。 「てことはなんだ。お前は自分の暇潰しの為に人殺したって言うのか。」 「そうだけど何か?」 大瀧は一瞬で五メートル程離れていた谷川の下に迫り、みぞおちに打撃を一発入れた。 「俺の嫌いな奴を教えてやるよ。」 大瀧は腹を押さえた谷川に今度は横蹴りを入れた。 「一つは馬鹿みたいに熱血な奴。」 大瀧は体勢を立て直そうとする谷川のみぞおちを再び殴る。 「二つ目は全て金で解決しようとする奴。」 大瀧は谷川の渾身の蹴りを避ける。 「そして三つ目は…」 大瀧は谷川の顔を殴る。 「軽い気持ちで命を消す奴だ!」 谷川は殴られた衝撃で吹き飛ぶ。 (凄い…!) 遠藤は心から思った。
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