2.纏 腐

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谷川は倒れている。 「さっさと立てよ、この野郎。」 大瀧は谷川に近付いていった。 遠藤は勝利を確信した。 その時、谷川が呟いた。 「うぜえ。」 大瀧が首を傾げた瞬間、谷川は起き上がって大瀧の腹を蹴った。 大瀧は寸前のところで防ぎ、衝撃を和らげる為に後ろに退いた。 「マジ死んどけ。」 谷川は右手を銃の形にして大瀧の方に向けた。 大瀧と遠藤が理解できずにいると、谷川が撃つ真似をした。 すると不思議な事に大瀧が一歩退いた。 その後も二発、三発と谷川は撃つ真似をする。 その度に大瀧の体が揺れる。 遠藤は大瀧の背後しか見えないので大瀧の様子は分からなかった。 突然、遠藤は強烈な臭いを感じた。 (ゴムが焼ける臭いだ…。まさか!) 「大瀧さん!」 遠藤は事態に気づく。 大瀧は振り向いた。 遠藤は目を大きく見開いた。 大瀧の服はボロボロになり、皮膚は至る所ただれている。右腕は骨まで見えていた。 大瀧は苦痛の表情を浮かべている。 「流れ弾…当たってねえか?当たらねえよう気を付けろよ。」 「え…?弾って、相手は何も持ってないじゃないですか。」 大瀧は遠藤を無視して谷川の方を向く。 「お前の能力は分かったぞ。」 「へぇ。」 谷川は眉を寄せる。 「お前の能力は標的を腐らせる能力。多分、お前のその手。その指の先端から何か…こう…ばあーっと出してんだろ。」 大瀧の説明は大雑把だったが、遠藤は理解出来た。 谷川は高らかに笑う。 「ハハハハハ。今さらかよ。あ?おっさんよぉ。分かったところで残念でしたね~。そんな状態で何ができんの?」 へらへらと左右に揺れた後、両手を銃の形にした。 「死ね。」 谷川は大瀧に向けて勢いよく連射した。 大瀧は全ての弾をくらい、前のめりに倒れる。 瞬間、大瀧は笑った。 そのまま大瀧は両手を地面について体勢を立て直して谷川に詰め寄り、谷川の両手の人差し指を外側に曲げた。 「なっ…があああ!」 谷川はその場にうずくまる。 「な…なんで動けるんだ!」 遠藤もそれは疑問だった。 大瀧は不敵な笑みを浮かべながら説明した。 「俺もお前と同じ能力者だよ。まあ、お前より凄えけどな。俺の能力は不死身。死ねない体だ。俺に勝負を挑んだ時点でお前の負けはもう決まってたんだよ。」 谷川はやる気を失う。 大瀧は谷川を起こして腹を一発殴り、気を失わせた。
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