2.纏 腐

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「よし、終わり。」 傷一つ無くなった大瀧は煙草を吸い始めた。 「あ、あの…大瀧さん。」 遠藤は大瀧に声をかける。 「なんだ。」 大瀧は遠藤の方を向かずに返事をする。 「その人はどうするんですか?」 「あー、そうだった。」 大瀧はそう言ってポケットから球状の物体を取り出し、谷川の頭上に放り投げた。 球は谷川の頭上で閃光弾のように光り、数秒経って光は消えた。 「これで大丈夫だろ。」 大瀧は球をまたポケットにしまった。 「大瀧さん、それは一体…」 大瀧は遠藤の方を向いた。 「これか?杉原の能力を利用して作った、能力を封印する球だ。この中に奴の能力を閉じ込めた。」 遠藤は呆気にとられた。 「よし。帰るぞ。」 大瀧は遠藤の肩を叩いて、来た道を戻っていく。 「ま、待ってください!」 遠藤も急いで後を追った。 「あの馬鹿、しくじりやがったか。」 「まあまあ、至極当然の事じゃあないか。」 「そんな悠長な事を言っているんじゃありません。あなたはもっと焦りなさい。」 「そうだよお父さん。しっかり事態を把握しないと。捨て駒は沢山いるけどさ。」 「あはは、すまない。でも、焦ってもしょうがないだろう?」 「うるせえよ。一気に潰しにいきゃいいだろうが。」 「それじゃあ面白くないよ。」 ごくごく普通の家庭の朝食風景。だが、話している内容は謎だ。 「あの~、大瀧さん。」 「なんだよ、うるせえな。」 「いろんな人にじろじろ見られてるんですけど。」 大瀧と遠藤は街中を歩いていた。 それを沢山の人が見ていた。 大瀧の服が至る所破れているため、当たり前な事だ。 「どうでもいいだろ。」 大瀧は普通に言う。 「いや、どうかな…。」 遠藤は恥ずかしがりながら、車に乗った。 大瀧の連絡が終わったところを見計らって、遠藤は大瀧に質問した。 「大瀧さんの立場って何ですか?」 「実行班第一班副班長だったかな。」 「何で大瀧さんは不死身の能力を持っているのに杉原さんよりも立場が下なんですか?」 大瀧が笑いながら言う。 「それは杉原への不満か?」 遠藤は手を大きく横に振る。 「いや、そうじゃなくて、あの…」 大瀧が真面目な顔で答える。 「一つは、あいつの能力が一番重要だってことだ。もう一つは…」 後の言葉は遠藤にとって忘れられない言葉になった。 「能力があったって何も変えられないからだ。」
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