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【『何か』で出来た剣
剣を持つ『女子高生』
そしてバラバラに『斬り裂かれた』…】
「がはっ、」
遠藤快は変な声を立てて目を覚ました。布団から抜け出した上半身が窓越しに朝日を浴びる。
「頭痛え…。」
酷い寝覚めと頭痛に眉をしかめて頭を押さえる。今日も学校。小野田に普通に生活をしたいと言ってしまったが為に、学校に行かなくてはならない。
「あ~、面倒くさい。」
布団の上に座ってボヤいていると、桜楓が部屋に入ってきた。
「あ、起きた?ほら、さっさと朝ご飯食べなさい。」
セリフだけ聞くとお母さんのようだが、格好はエプロンと包丁という斬新なホラースタイルだ。
「んー…。」
遠藤はそう言って時計を見た。時刻は十時を回っていた。素早い首の運動で桜の方を向く。
「おい、遅刻だろ!?」
怒鳴った途端、眼前に包丁が突きつけられていた。
「怒鳴るんじゃないわよ。」
二度とお母さんとは呼べないほどの冷ややかな声が鼓膜を揺らした。
「すみませんでした…。」
頭痛は治った。謝った後に冷静な脳で訊く。
「今日、学校じゃないのか?」
桜はやれやれと溜め息をついてから答えた。
「今日は学校の『創立記念日』で休み。」
「あ、」
「だから今日、朝ご飯食べたらついてきて。」
「え、なんで。」
「私を心配させた罰よ。」
『組織』について知らない桜にとっては同居人が何日か寝こんだ後、また何日か家を抜け出していたとしか思えなかった。その理由を聞かれない事自体、幸運な事だ。そんな状況で遠藤が言い返せるはずもなく、断る道理も見つからなかった。
「分かったよ。」
諦めに近いため息が天井を一周する前に朝食に向かった。
同時刻、とある家庭の朝食風景。
小学生程に見える男の子。
「ねえねえ、今日は誰を使うの?」
母親らしき女性。
「今日はいいわよ。面倒くさいもの。」
厳格そうな父。
「そうだな。面倒だ。」
「じゃあ、いつ行うの?」
「いつでもいいわよ、颯真(かざま)。」
朝食は目玉焼きとトーストだった。そこに添えられたコーヒーに砂糖を多めに入れて飲み干した。
遠藤と桜が二人で(側から見れば)仲良く歩いていると完全にカップルに見える。美貌を備える桜の側にいては、遠藤は独身男からの非難の目を気にせずにはいられなかった。
「そんなに綺麗な彼女がいやがって…。」そんな声が聞こえるかのようだ。
だから桜と一緒にいるのが嫌だ。その遠藤の気持ちがテレパスの桜に伝わらない訳がない。
だが、桜は遠藤を無視して歩いて行く。そうして二人はとある大型書店に着いた。
「何でここに来たんだ?」
「参考書買いに来たのよ。どういうのがいいか教えてほしいの。」
桜の成績は中の中。可もなく不可もなく卒なくこなす。それに比べて遠藤の成績は上位に入る。意外に頭が良いのだ。
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