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二人きりの喫茶店。竹下は頬杖をついて呆れ顔を見せながら言った。
「小野田さんから何も聞いてないの?」
遠藤は小野田和則との会話を思い返す。正式な入会をし終わった後、帰り際に立ち止まったことを思い出す。
「すみません、もう一つ。これは条件じゃなくてお願いなんですが。」
黄色に覆われた空間で小野田は笑顔のままだった。
「何だね?」
「田中に会わせてほしいんです。今どんな状態で何処にいるのかは分かりません。でもここにいることは分かってるんです。勘ですけど…。会わせてもらえないでしょうか?」
突然、遠藤は真っ黒な世界に包まれた。その世界は何かを威嚇しているような、もしくは忠告しているかの如く、遠藤に威圧感を与えていた。
直後、真っ白な部屋の中、小野田は言った。
「すまないが、それはできない。確かに彼はこちらで預かっている。しかし、彼には幾つか不自然な点が見つかってね。本当は始めに君に会わせなくてはならなかったのだけれどね。」
「その不自然な点って…」
遠藤が言い終わる前に、また黒の世界に変わる。光が潰える世界の中で、汗が背中に流れるのを感じる。
闇の中、どこからか小野田の声が聞こえる。
「この圧力に耐えられるようになったら教えてあげよう。」
遠藤は頷くことしかできなかった。だから今、竹下の問いへの答えは一つしか持ち合わせていない。
「何も聞いてなかったですね。」
断言されて、竹下は溜め息をついた。
「本当にだめだな、あの人。まあ、今から覚えてね。まず、班っていうのは仕事の役割ね。『情報班』、『調査班』、『医療班』、『実行班』の四つがあるの。遠藤君は自ら実行班の第一班に入ったのよね。偉いわね。いつ死ぬか分からないのに。」
竹下の言葉を聞いて、遠藤は飲んでた水を噴き出した。
「え、死ぬ!?」
「知らなかったの?これで何度目?第一班なんて奇人の集団だと思ったけど…といっても三人しかいなかったはずだけどね。」
「え、三人って誰ですか?」
杉原十岐と大瀧詠一以外に思い浮かぶ人がいない。奇人変人の他に誰が待ち受けるというのだろうか。
「杉原と大瀧と…あと…立石だっけっかな?」
思ったより平凡な名前が竹下の口から聞こえてきた。
(立石さん…。聞いたことないな。)
「その立石さんは何の能力を?」
「さぁ…。めったに人前に顔を出さないからね…。」
竹下が何とか立石の情報を思い出そうとしてるときに、桜が電話を終えて帰ってきた。
「竹下さん、すみません。用事が出来てしまって。お金置いていくので何か食べてって下さい。おごりです。」
(おい、俺は…。)
桜はわざとか本気か遠藤を無視し、早々に店から出て行った。
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