847人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ私たちも行きますか。」
竹下はそう言うと監視カメラの前に手をかざす。
その後、レジの店員の肩を手で触って帰っていった。
遠藤には竹下の能力が少し分かった気がした。
『記憶を変える能力』
遠藤が考えていると竹下は既にどこかへ行ってしまっていた。
「どこに行ったんだ?」
遠藤が辺りを見回すと、桜を発見する。桜は遠藤の方へ歩いてきていた。
「ごめん、さっき友達に連絡したらそんなことは言ってないって。」
この時は「不思議な事もあるものだ」くらいにしか思っていなかった。その後は参考書探しを再開し、そのまま家へと帰った。
その日の夜、街中を逃げ回る男がいた。
息を切らしながら走り回るが、遂に男は裏路地の行き止まりに追い詰められる。
前からゆっくりと高校生ぐらいの女子が近付いてくる。ナイフを持った女はぶつぶつと呟きながら男へと歩み寄る。
「私の運命の人は誰?あなた?」
「た、助けて、助けて、助け…」
男の頭が地面に落ちた。その後、首が失くなった体からは重力に逆らえずにその場に崩れ落ちる。
「あーー♪」
女は頬を染め、照れながら去っていった。
翌日の朝、平和な朝。遠藤は普段通り学校へ行った。
朝のSHRで担任が告げた。田中は家族の都合で転校したことになっていた。
「遠藤って風邪引いたんだって?馬鹿は風邪引かないのにね。」
休み時間に話しかけてきた同級生を見る。笠松創(かさまつ はじめ)が笑っていた。
笠松は遠藤のクラスメイトである。人懐っこい性格で誰からも好かれ、クラスのムードメーカーのような存在だ。
「引いて何が悪い。」
(俺はどちらかといえば頭の良い方だ。)
「そんな事より、知ってる?」
(そんな事って…。)
遠藤は風邪の裏の真実を言い聞かせてやりたいと思ったが踏みとどまる。笠松は本題を遠藤に伝えた。
「最近、夜遅くに街中で殺人事件が起きてるんだって。しかも死体は全部首が無い。取れてるんだって。凄いと思わない?」
「そんなもの警察に任せれば…」
待ってましたと言わんばかりに笠松は遠藤に顔を近づける。
「凶器も犯人の痕跡も一切無いんだよ!そんな状況でどうしろって?」
「じゃあ事件の周辺を封鎖すれば?」
「沢山の人が行き来する重要な場所で出来る訳ないじゃないか。警備は強化してるけど難しいんだよ。」
笠松が溜め息をついたタイミングで休み時間終了のチャイムが鳴る。自分の席に戻る笠松を見送りながら、遠藤は話の内容を思い出していた。
(不可解ねぇ…。)
虫の知らせか、遠藤はこの事件と関係を持つことを漠然と予想していた。
そしてそれは早くも現実となる。
最初のコメントを投稿しよう!