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放課後、遠藤は桜と笠松と一緒に殺人のあった現場に来ていた。奇妙な三人組の正体は四時間前に遡る。
昼休み、昼食の代表である焼きそばパンを食べながら遠藤は笠松の話を聞いていた。
「…でさ、見に行こうよ!」
遠藤は最後の一口を食べ、ティッシュで口元のソースを拭った。
「何だ、お前の話をまとめると、警察も対処出来ない様な事件にとても興味があると。だけど一人だと証拠や手がかりなど様々な見落としがあるかもしれない。だから一緒に行こうと。」
「なんだい、やけに説明的だね。」
笠松が大袈裟に笑う。遠藤は窓の外を眺めながら返答した。今宵は快晴。
「ま、今日は暇だし。いいよ。」
そう言って牛乳を飲む。焼きそばパンの後の牛乳は至福である。
「よし!じゃあ楓も誘おう!」
至福を噴き出した。遠藤は激しく咳き込みながら笠松の方を向いた。
「そ、そうか、別にいいけど。」
笠松が違う教室へと向かう。彼がいなくなると平和が訪れる。
遠藤には笠松と桜の関係が全く分からなかった。
笠松は桜の事を楓と呼び、桜は笠松の事を創君と呼んでいる。恋人どうしかと思った時もあったが、訊くといつもはぐらかされる。
四時間後、つまり現在に至る。桜は現場に赴き、開口一番に疑問を口にした。
「創君、ここで合ってるの?」
その意見には遠藤も賛成だった。その場所は、現場というにはあまりにも『違和感』が強かった。
①首が刎ねて飛んだはずなのに血痕が一つも残っていない。
②警察が来た痕跡が無い。
③騒ぎ立てる人がいない。三人で難なく現場に来れた。
「本当にここで合ってるのか?」
「合ってるよ。」
笠松が自信をもって答える。一体どこからの情報なのだろうかと疑問に思いながらも、遠藤と桜はは現場をじぃっと見つめた。
「何をやってるんだ!」
不意に後ろから声が掛けられた。振り返る。警官が立っていた。現場は袋小路。逃げ場無し。
警官が歩み寄ってくる。笠松は遠藤と桜に耳打ちした。
「僕が合図したら走るように。あの人は僕が何とかする。」
「それじゃ創君が…」
遠藤は二人の会話を無視し、警官を見ていた。『知っている』気がした。どこかで見た記憶。その記憶は、つい最近だ。
「あ、」
「あ、」
遠藤と警官の言葉を発するタイミングは一緒だった。その反応を笠松が見逃さなかった。
「え、何、知り合い?」
(知り合いなんてもんじゃない。この人は…。)
「大瀧さん、何でこんな所に?」
「遠藤こそ、何で?」
警官の格好をした大瀧詠一も驚いている。二人の困惑を嗅ぎつけたかのように、もう一人が現場にやって来た。
「お~い、早く帰るぞ。…お、遠藤快だ。」
わざわざフルネームで名前を呼んだ桜庭和志が大瀧の隣に立って遠藤達を手で払う仕草を見せた。
「あ~、何でここにいるのかは知らんが、まあ、さっさと帰れ。ここは俺達の『仕事』だから。」
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