847人が本棚に入れています
本棚に追加
【『誰か』と一緒にいる自分
夜の裏路地
大きな『刃物』を持った女
頬を染めている女
奥に『バラバラ』になったーーーーーー】
遠藤は布団からはみ出して起きた。すぐ横には桜が寝ている。寝息がかかる程の距離にまで近付いてしまっている。
(やばい…今起きたら殺される…。)
遠藤は冷や汗をかきながら、ゆっくりと自分の布団へと戻った。しかし、もう少しで離れられるというところで桜の方から近付いてきた。
とうとう桜が上に乗ってくる。この密着は非常にマズイ。文字通り『ぼろ雑巾』にされてしまう。
(う、動けない…。)
桜が何か寝言を言っている。聞きたくなくても聞こえてしまう。だから敢えて遠藤はしっかりと聴いた。
「…大好き。」
遠藤の心臓の鼓動が速まる。死に近付く。恐らくもう半分死んだ。心が揺れたからではない。こんな事を聞いて桜に殺されない訳がないからだ。
(ここは…寝たふりだ。)
遠藤が狸寝入りを決断したその時、運悪く桜が起きた。そして目が合った。
「あ、」
「あ、」
声も体も重なる仲良し兄妹だ。瞬間、遠藤の世界は暗闇に染まった。
一時間後、再び目を覚ます。よかった、まだ息がある。いや、幽体離脱?違う違う、床に触れる。
「あ、起きた?ほら早速ゴミだし行ってきて。」
桜の口調はいつもと変わらない。先ほどの出来事は夢かと思った。しかし、顔の痛みから事件は夢でなかった事が白日の下となった。
遠藤はゴミを出しに行っている時、ずっと桜の寝言を思い出していた。
『大好き。』
桜が特に好きな芸能人、漫画、アニメ等は無い。となると、現実にいる人間で身近な人の可能性が高い。
遠藤は桜に好きな人がいることを確信した。そしてそれが『笠松創』なのではないかと予想した。
(そういえば、夢で…。)
朝食を食べながら夢を思い出す。夢で出てきた女は明らかに笠松を狙った女だった。遠藤の隣にいた人は遠藤の知り合いだった。そして、バラバラ死体は、…思い出せない。一番肝心な部分が抜けてる。
目を瞑る。遠藤はその人を知っていた。自分はその人の名前を叫んでいた。隣に立っていた人は遠藤を引っ張りながら止めていた。
(いや、バラバラ死体になる前、誰か何か言って…)
『逃げろ!』
その瞬間、すべてを思い出した。隣人も、『死体』の正体も。
「どうしたの?」
我に返る。いつの間にか目を開けて、涙を流していた。その様子を桜が怪訝な表情で見ている。
「いや、別に…。」
遠藤は涙を袖で拭く。その様子を桜は心配そうに見ていた。
「何か困ってる事があるなら言ってよ。」
「あ、ああ…。」
その後、二人は学校に行った。そこに『予知』の内容が眠っている。
最初のコメントを投稿しよう!