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遠藤が一歩後退りする間にも笠松はお構いなく話し続ける。
「僕の予想では、君の能力は『予知能力』系統だね。しかも、まだ不安定で脆い。」
遠藤がまた後ろに下がる。そのせいで背中が壁に付いた。黙っていられなくなった桜が話に入ってくる。
「ちょっと待ってよ、意味が分からない!快が何したって言うのよ!」
「楓は黙ってて!」
笠松が桜を怒鳴りつける。ここまで激情する笠松を見たことが無かった。
笠松は表情を戻して遠藤の方を向く。
「ねえ、遠藤。教えてくれないかい?」
数秒間の時が流れた後、遠藤は諦観の念を持って床に座り、話し始めた。
「笠松の言う通りだよ。俺の能力は『予知』だ。しかも、寝ないと発動しない。自分とその周囲を客観的に視るだけだ。場所や時は選べない。」
「だけど前回は何故か寝ないで自然に予知した。しかも数秒後の未来を。」
笠松は遠藤の話に言葉を付け足した。遠藤は力なく頷く。
「そうなんだ。あれは俺もよく分かってない。」
(別に口止めされているわけではない。これ位はいいだろう。)
遠藤がため息をついた時、笠松がある『仮説』を持ち出してきた。
「もしかしたら、能力自体に強弱があるのかもね。」
「強弱?」
「レベルみたいなものだよ。あの警官に聞けば。深い仲なんでしょう?」
その時になって遠藤は笠松の洞察力が優れていることを知った。笠松という人間の捉え方が変わる。
「ちょ、ちょっと待って!何の話?」
話に置いていかれた桜が二人に問いかける。その桜を見た遠藤が笠松の方に向き直る。
「そういえば、何で桜を呼んだんだ?」
「そうだったね。遠藤、僕達について何か予知をしたんだろう?内容を教えてもらいたくて。」
(そこまで知っていたのか…。)
「ああ。先ずは桜にこの状況を説明しないとな。」
笠松がそれは難しいと言わんばかりに眉を顰めたため、遠藤は再びため息をついた。
しかし桜への説明は案外直ぐに終わった。理解はできなかったようだが、状況は呑み込めたらしい。
「で、快はどんな夢を見たの?」
予知夢についてを知った桜が遠藤に問う。しかしその答えを遠藤は躊躇った。
「それが…先ず、笠松だけ。」
遠藤はそう言って笠松を近くに来させて耳打ちする。話を聞く笠松の顔が一瞬強張り、また冷静な顔に戻った。
遠藤の耳打ちが終わった後、笠松は笑いながら言った。
「だから遠藤は僕達を止めたのか!うん、それは行かない方が良いね。」
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