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桜の膨れっ面を見ながら遠藤は笠松の反応に安堵した。
「だろ。しかし、お前よく今の話を聞いて平然といられるな。」
「まあね、ひどいとは予想してたし。」
「ちょっと何で二人だけで盛り上がってんのよ。」
二人の間に桜が割って入る。笠松は少し考えてから、遠藤に耳打ちした。
「楓には柔らかく伝えておくよ。」
遠藤が見た夢は以下の通りだ。
夜、三人は例の現場に行く。そこで例の女が現れ、三人を襲う。笠松が遠藤を引っ張って逃げる。
バラバラ死体は、『桜楓』だ。
「ふうん。分かった。信用して行かないことにする。」
遠藤は桜が今回はやけに素直に聞くのだと驚いた。
「楓は帰って。今から僕と遠藤の二人で話す。」
「じゃあ帰るわ。」
鍵を開けて部屋を出る。桜が家から出たのを窓から確認してから二人は話し合った。
話し合いは一時間を超え、決心した遠藤は震える手で桜に電話した。
「今日は遅くなる。夕食も食べてくから。」
「分かった。」
電話はそこで切れた。携帯電話をしまい、遠藤は笠松を見る。笠松は自信に満ちた表情を浮かべていた。
「笠松、本当にやるのか?」
「まあね。これで分かることもあるはずさ。僕の予想が正しければ。」
二人が向かう場所は街だ。
午後7時。二人は例の場所へ向かった。
「なあ、もしだが。失敗したらどうするんだ?」
遠藤が笠松に聞く。
「まあ、遠藤だけは逃がすよ。」
両手をポケットに突っ込んだ状態で話す。
「そんな気楽な…」
遠藤の話を無視して笠松が呟く。
「…来た。」
遠藤は前を見る。
本当に来た。今回はフードは被ってない。
「あれ、よく見たら結構可愛いね。」
笠松は茶化す。
後ろは壁。まさに背水の陣だ。
「また、会った。」
(ん?)
女の様子がおかしい。
「また会えた。殺し損なって。やっぱりこれは、…運命!?」
明らかに照れてる。
「遠藤、どうする?」
笠松が苦笑いしながら聞く。
「笠松、あの女と話せるか?」
「まあ、多少は…」
笠松は女の方を見る。
「あの、すいませんがどなた様ですか?」
丁寧語だ。
女は恥じらってた顔を二人に向けた。
「私は片桐 加代子。私は運命の人を探しているの。もしかしてあなた?」
「え、あなたって…僕?」
「私の攻撃を避けたわよね。」
笠松は首を横に振る。
「それはそこの男のおかげだよ。」
嫌な風が吹く。
「じゃあ、どちらが運命の人か見極めてあげる。」
そう言って片桐は手に持った刃物を二人に突き出した。
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