1.蝋

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遠藤は自宅のドアを開けて静かに自分の部屋へ向かった。 遠藤と桜(と田中)は帰宅部なのだが、いつも遠藤が桜より先に家に帰ってくる。 布団に潜り、本日二回目の睡眠をとった。 その頃、例の部屋では騒ぎになっていた。 「発信元確認しました。」 「発信者確認しました。」 「能力値確認しました。」 次々と声があがる。 その情報は全てある男の下へと集められる。 男は情報処理をしている場所を見れる場所にいた。 男はある人物を呼んだ。 数秒で駆けつけた人物は二十歳程だった。 「実行班第一班隊長杉原十岐(すぎはら とおき)。お呼びでしょうか。」 杉原は直立不動の姿勢で男の返事を待った。 「そこに腰掛けなさい。」 男は優しい声で言った。 杉原は返事をした後、目の前の椅子に座った。 男は話し始めた。 「君、今回の標的と接したらしいじゃないか。君ともあれば常識ぐらい分かるよね。」 真っ白だった部屋が黒に変わった。 「すみませんでした。しかし、今回は待ちに待っていた標的です。逃す訳にはいかないと思いつい…」 「言い訳を聞いているんじゃないよ。」 男は優しい声で言った。だが、男が発する一言一言が身体に重く響く。 「誠に申し訳御座いませんでした。」 杉原は深々と頭を下げる。 「まあまあ、君も反省しておるようだし、大目に見てあげるとしよう。その代わりにだが、今回は君一人で行ってきてくれ。」 杉原は理由を問おうとしたが口出し出来る立場ではないので、頷き部屋を出ていった。部屋の色は青になっていた。 「うわあああ!」 遠藤は布団から飛び起きた。本日二回目だ。 (おかしい…1日に二度も見たこと無いのに…) 遠藤は気分を変えようと外に出た。 外は暗かった。 まだ桜は帰ってこないようだ。 遠藤は住宅街を一人歩いていた。 心地よい風が暗い気持ちを吹き飛ばしてくれそうだった。 周りには誰もいない。 そのはずだったが、不意に後ろから声をかけられた。 遠藤が驚いて振り向くと、そこには友人の田中がいた。 「なんだ田中か。こんな所で何してるんだ?」 遠藤は田中に話しかけたが田中はいつもと様子がおかしかった。 そう思っていると田中から話しかけてきた。 「お前の夢について知ってることがあるんだけど、聞く?」 明らかに田中とは違う気がする。 遠藤が黙っていると田中が痺れを切らして叫んだ。 「さっさとこっち来いよ!」
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