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遠藤は自宅のドアを開けて静かに自分の部屋へ向かった。
遠藤と桜(と田中)は帰宅部なのだが、いつも遠藤が桜より先に家に帰ってくる。
布団に潜り、本日二回目の睡眠をとった。
その頃、例の部屋では騒ぎになっていた。
「発信元確認しました。」
「発信者確認しました。」
「能力値確認しました。」
次々と声があがる。
その情報は全てある男の下へと集められる。
男は情報処理をしている場所を見れる場所にいた。
男はある人物を呼んだ。
数秒で駆けつけた人物は二十歳程だった。
「実行班第一班隊長杉原十岐(すぎはら とおき)。お呼びでしょうか。」
杉原は直立不動の姿勢で男の返事を待った。
「そこに腰掛けなさい。」
男は優しい声で言った。
杉原は返事をした後、目の前の椅子に座った。
男は話し始めた。
「君、今回の標的と接したらしいじゃないか。君ともあれば常識ぐらい分かるよね。」
真っ白だった部屋が黒に変わった。
「すみませんでした。しかし、今回は待ちに待っていた標的です。逃す訳にはいかないと思いつい…」
「言い訳を聞いているんじゃないよ。」
男は優しい声で言った。だが、男が発する一言一言が身体に重く響く。
「誠に申し訳御座いませんでした。」
杉原は深々と頭を下げる。
「まあまあ、君も反省しておるようだし、大目に見てあげるとしよう。その代わりにだが、今回は君一人で行ってきてくれ。」
杉原は理由を問おうとしたが口出し出来る立場ではないので、頷き部屋を出ていった。部屋の色は青になっていた。
「うわあああ!」
遠藤は布団から飛び起きた。本日二回目だ。
(おかしい…1日に二度も見たこと無いのに…)
遠藤は気分を変えようと外に出た。
外は暗かった。
まだ桜は帰ってこないようだ。
遠藤は住宅街を一人歩いていた。
心地よい風が暗い気持ちを吹き飛ばしてくれそうだった。
周りには誰もいない。
そのはずだったが、不意に後ろから声をかけられた。
遠藤が驚いて振り向くと、そこには友人の田中がいた。
「なんだ田中か。こんな所で何してるんだ?」
遠藤は田中に話しかけたが田中はいつもと様子がおかしかった。
そう思っていると田中から話しかけてきた。
「お前の夢について知ってることがあるんだけど、聞く?」
明らかに田中とは違う気がする。
遠藤が黙っていると田中が痺れを切らして叫んだ。
「さっさとこっち来いよ!」
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