1.蝋

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田中は地面におもいっきりぶつかった。 遠藤はその誰かを見た。 (あれ?この人どこかで見た気が…。) 男の手を見ると田中に触れられた部分から蝋化が侵食し始めていた。 「だ、大丈夫ですか!?」 男は蝋化した自分の腕を見ると袖口から札のような物を出して蝋化した腕に貼った。 すると、見る間に腕が治っていった。 「ふー、危ないな。腕がなくなるところだった。」 男は笑顔で、というよりもニヤツいた顔で独り言を呟く。 男が遠藤に気付くと更ににやついた。 「大丈夫だったか。あの時の礼だ。金ありがとう。」 (あの時?) 遠藤は男の事を思い出した。 (朝、ゴミの中でボロボロだった男の人か!) 遠藤がもう一度男の方に向いた時、男はもう田中の方を向いていた。 「俺が来たことだから、見逃してはくれないか。」 「…馬鹿言うなよ。無理に決まってるだろ。」 田中が明らかに動揺している。男は頭を掻いた後、真面目な顔をして言い放った。 「しょうがない。実行班第一班隊長杉原十岐、いくぞ!」 杉原の声とともに田中が遠藤へ駆けだした。 杉原は冷静に腰にさしていた銃を抜き、銃口に先程と同じ札を貼って田中の前に向けた。 「GAMEOVER」 杉原はそう言い放つなり、銃を撃った。 田中の額に札が貼られる。 すると田中は何かにうなされた後、その場で倒れた。 一瞬の出来事だった。 男は遠藤の方を向き、また笑顔になって話し始めた。 「大丈夫だったか?まあ、大変だったな。今あったことは秘密にしといてくれ。」 遠藤は固まっている。 「あー、自己紹介が遅れた。俺は杉原十岐。10月10日生まれ。天秤座。好きなアニメキャラクターは…」 杉原はずっと遠藤に自己紹介をしている。 突然、遠藤は警官の事を思い出した。 「あの警官を助けてくれよ!頼む!」 だが、杉原は首を横に振った。 「何でだよ!あの人には何の関係もないだろ!さっきの札で…」 杉原が話を割った。 「お前は偉いな。こんな状態で他人の心配ができるんだから。だが無理だ。俺の能力は能力を消す能力。あの警官を見てみろ。もう半分身体が燃えとけた。能力によって形質が変わった場合、ダメージは体に蓄積しない。ただ、この状況で戻すと…分かるな。」 杉原が遠藤の方に振り向くと、遠藤は足下に倒れていた。 「おい、遠藤、おい!」
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