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「‥‥お母様達からの連絡は?」
「‥‥まだございません。今月からフランスの方でのお仕事があると、以前からおっしゃっておられました」
「‥‥そう、わかりましたわ」
―――私の父は、世界に名を馳せる有名ブランド会社の社長。母はその会社でデザイナーとして働いている。
世界的な企業と言うだけあって、仕事は多忙を極めているため、家にいることはほとんどない。
正直、両親のおかげで生活は何一つ不自由なく暮らせている。むしろ十分すぎるくらいだ。
私――、もとい、姫野大河は、この広い家で使用人達と毎日を過ごしている。
部屋着を着替えて、顔を洗ってから広間へ向かうと、何故か先客がいた。
しかもこいつは、ほぼ毎日私より先にここへ現れている。
「やあ姫、おはよう。今日のフレンチトーストは最高だよ」
ドアの前でため息をつく私の姿を見つけると、そいつは嬉しそうに声をかけてきた。
我が家の住人でもないくせに、図々しくも席について朝食を貪っているのは、
「‥‥何故毎日毎日我が家で朝食を取っているのでしょうか、ノア兄さま」
金髪紅眼のコウモリ、ノア兄さま――もとい、ノアール・ディアブールである。
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