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「そういえば、叔父さん達はまだ帰って来ないの?」
紅茶を飲みながらノア兄さまが尋ねてくる。
「ええ、今月はフランスで仕事があるそうです。またしばらくは忙しくなるみたいですわ」
「へえ、フランスかあ」
フランス、という言葉を聞いて、兄さまが嬉しそうに目を細めた。
「兄さまはフランス生まれフランス育ちですものね」
「‥うん、懐かしいな」
兄さまは、15歳の時にこっちに引っ越してきてから、一人暮らしをしているらしい。
我が家の朝食を毎日食べに来るのは、コウモリである兄さまが朝に弱いからだろう。
私が引っ越して来るまでは、朝食は食べていなかったと言っていた。
毎朝毎朝来られても私が兄さまを無理矢理追い出さない理由は、そこにある。
嬉しそうに細めた瞳のその奥には、兄さまの大好きなフランスの町並みが映っているような気がして、自然と私も頬を緩めた。
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