(七)京都の学生

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府警から送信されたFAX内容。 押収物。デニムパンツ??並びに携帯の一時預かり、調査終了にて本人に返却。 向井は新幹線の中で資料を読みながら、非常に残念に思っていた。 というのも乞食からもらったバーコードリーダーの添付された紙を、あろうことかこの青年は、ズボンのポケットにしまい込んだまま洗濯しており、 府警がそのデニムパンツを押収したものの、肝心のバーコードリーダーが記載された紙からは、指紋も何も取れなかったと、書かれていたからだ。 「この間抜け」 証拠を破損しているだなんて。 そもそもこの学生の話は本当だろうか? 今どきの若者の話、信憑性にかけるのでは…   桐生尚人、現在、京立大学、経済学部の四回生か。住所は…   新幹線の隣りの座席に座っていた佑介が資料をのぞき込んでいる。 「向井さん、この学生の言ってることって、本当ですかね。乞食からもらったバーコードリーダーだなんて、しかもそれがもう存在しないとは…」 「どうかな。まぁ、会ってみれば分かるさ」
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