(七)京都の学生

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若い者には、足ではついて行けないな。 向井が息をきらしてそう思っていると、橋の下まで行って、佑介がようやく前の青年に追いついた。 「でかしたぞ」   遠くからそう叫んで、やっとのことで二人のそばに追いつく。 向井は「ハァ、ハァ」肩で息をしていた。 もちろん逃げた青年と佑介も、しばらく話すことが出来ない状態。 やがて呼吸が落ち着いて来ると、向井は青年の方をじっと見た。 青年は、何かビクビクしていて怯えている様子。 そこで彼は穏やかな口調で話しかけた。 「君、桐生尚人くんだよね。私達は東京から来た警視庁サイバー犯罪対策課の…」 そこまで聞くと、青年は急に顔色を変えて、頭を九十度さげ、ひたすら謝り出した。 「ごめんなさい。許して、もうゲームなんてしません。それにあのゲームは、京都府警に没収されて、もう僕の手元にはないんです。 バッバーコードリーダーだって、僕、ジーパンのポケットに入れたまま、うっかり洗濯しちゃって、なくしてるし…」
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