(七)京都の学生

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「いや、何もそのことをとやかく言いに来たのではないんだ。ただ少し話を聞きたくてね。それでさっきマンションに寄ってみたら、部屋にいたのは君じゃなかったんでね」 すると青年は、ゆっくりと顔を上げた。 向井は青年と目が合うと、こう尋ねた。 「さっき君の部屋にいたのは、友達かい」 「アッアイツは、同じ大学の理学部に通う大学院生で、藤野誠(フジノマコト)っていうんだけど、隣りの部屋に住んでいるってだけで、それほど親しくはなかったんです」 「じゃあ、なぜ、彼が、君の部屋にいたんだね」 「それは、最近、彼の持っているパソコンの調子が悪いらしくて、僕のをたまに貸してあげるようになっていたんです。まぁ、ちょっとしたこづかい稼ぎっていうか、そんな感じで」 「なるほど。あのお隣りさん、どうやら君のパソコンでゲームをしながら、意識をなくしていたみたいだよ」
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