(七)京都の学生

13/17
前へ
/237ページ
次へ
しかし尚人は、この時、警察と関わることが、不安でたまらなかった。 なぜなら一昨日、彼の人生において、最重要な朗報がもたらされたばかりだったからだ。 その話が、東京の刑事となんか関わって、ご破算になりはしないかと、そのことばかりが頭をよぎっていた。 尚人は、先日、京都にある大手ゲーム機メーカーから、就職の面接案内が届いて、トントン拍子に内定が決まっていたのだ。 「お願いします。このことは大学とかには、内緒にしておいて下さい。僕、ようやく就職先が決まりそうなんです。だから、その会社に、警察ざたになったことが、バレでもしたら、内定の話が白紙になるかもしれない」 「ああ、分かったよ。別にこれは逮捕じゃない。ただ君の部屋で、隣人さんが意識をなくしていたのは事実だからね。職務柄、それについては、放っておけないし、他にも聞きたいことがあってね」 この時、向井の携帯電話が、上着のポケットの中で震えた。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

412人が本棚に入れています
本棚に追加