412人が本棚に入れています
本棚に追加
尚人は言葉に出しはしなかったものの、日頃のだらしない生活を振り返り、なんか悪い物が出たらどうしようと、早くも不安になった。
「おや、どうしたのかね?どこも病んでないのなら、心配ないだろ」
「あっ、はい、それはそうですが」
「では桐生様こちらへどうぞ」
横にいた女性に連れられて、ホールの左端にあった清潔感漂うトイレの前まで行くと、彼女は尚人にプラスチック製の透明なコップを差し出した。
「これをお持ち下さい」
「はい、でもマジで、尿検査するのですか」
「はい、マジです。これをしないと就職試験そのものを受けることが出来ません」
きれいな顔をして、平然と彼女がそう言う。
「終わりましたら、トイレの中の窓辺の棚に、尿の入ったコップをのせて置いて下さい」
「えっあ、はい、看護婦さん」
尚人は恥ずかしさのあまり、冗談を言いつつ、ともあれ仕方なくトイレに入った。
最初のコメントを投稿しよう!