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その先を見ると、小舟を漕いでいる船頭がいた。
尚人は声をかけた。
「あの、その封筒を拾って下さい」
するとその船頭が顔を上げた。
見ると、男は以前、河原で出会った白髪でヒゲ面の乞食そっくりだった。
尚人はドキッとして、一瞬言葉をなくした。
船頭は、その封筒を拾うと、しばらく尚人の方をじっと見ていたが、じきにそれを水面から上げて中に積み、舟を進め始めた。
「あっ、それ。僕の。ちょっと待って」
尚人は焦った。
ところがいくら大声で叫んでも、船頭は舟を止めることはなく、どんどん川下に向かって舟を漕いで行く。
尚人が河原の土手におりて行くと、そばには、さもどうぞと言わんばかりに自転車が止めてあった。
そこで、これを使用せよということだなと、単純に判断して、すぐ自転車にまたがろうとすると、
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