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アイツらは、きっと日頃からこのゲームに備えて鍛えてやがったに違いない。
足腰の強いじいさん達め。尚人はそう思いながら、上を見たり下を見たり、必死で崖を登り出した。
しかし後列のじいさん達が、群がって糸にぶらさがろうとするものだから、糸が激しく揺れて危なっかしい限りだった。
そして一番足の速い上にいるじいさん達は、まるで何度も練習していたかのように、スルスルと糸をよじ登って来る。
負けるな、尚人。食いしばれ、あきらめるな。
そう心でつぶやきながら、蜘蛛の糸を辿り上へ上へ。
振り返ると一番先頭のじいさんが、もうそこまで接近していて、手を延ばして尚人の片足を掴もうとしている。
「ぼうず、待て。その茶封筒の中を見せろ。お前を引きずりおろしてやる」
そう言って、先頭のじいさんが、足に手をかけてきたので、尚人は激しく蹴り入れた。
すると先頭のじいさんはじきにおっこちたが、まるで忍者のごとくしなやかに両足で着地している。
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