412人が本棚に入れています
本棚に追加
やがてある時点で、その蜘蛛の糸は、プツリと切れてしまった。
下を眺めると、じいさん達が、いっせいにおっこちて、悔しそうな顔をして、尚人の方を見上げている。
「やった。じいさん達が、そんなに欲張るからだ。ざまぁ見ろ」
「このクソぼうず」
「年寄りをもっと大事にせんか」
じいさん達が口々に文句を言っているのを聞きながら、尚人は腹を抱えて大笑いした。
それにしても全員、似た顔立ちのじいさん達だな。
よくこれだけ集めたもんだ。
そう思って彼はつくづく眺めた。
その後、幸運なことに、巨大蜘蛛の模型が、くるりと方向転換して、糸の出る尻を崖の上の方に向けたので、尚人はすっかり安心して、ようやく周囲を見渡した。
最初のコメントを投稿しよう!