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「アンモニア水」と書いてある黄色い水。
しかしこの時の彼には、もうためらう余裕などなく、手を延ばして一思いにその黄色い水を飲んだ。
すると驚いたことに、それは尿ではなく、ただの色のついたレモン水だった。
さわやかな香りと酸味が喉をうるおす。
その時点でぴたりと熱風が止まり、プレハブ小屋の四方の壁がバタッバタッと外側に倒れた。
尚人は茶色い封筒を抱えながら、びくびくして突っ立ったまま。
「おめでとうございます」
誰かの拍手する音が聞こえる。
振り返ると、最初にこの別館へ案内してくれた女性が立っていた。
彼女は以前にも増して、いっそうキレイで優しそう。
この時の尚人には、まるで天使のように見えた。
女性は尚人のそばに近づくと、どこにでも売られている二百五十ミリリットルのペットボトルのアイソトニック飲料とタオルを渡してくれた。
「よく頑張られましたね。これですべてテストは終了です」
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