(八)京都にある業界大手のゲーム機メーカー

35/39
前へ
/237ページ
次へ
尚人は、女性にそう言われて、大喜びしたいところだったが、疲れ切っていたので、微笑むのがやっとだった。 もらったばかりのジュースを飲み出すと、ふいに涙が溢れてきた。 クソッ柄にもなく、涙が出てきやがったぜ。 恥ずかしいってばよ。 尚人はうつむき加減に黙ってジュースを飲み続けた。 それから数分間、沈黙が続いて… ようやく彼が落ち着きを取り戻すと、女性はこう言った。 「あの、桐生様。採用に関しましてですが、のちほどこちらから連絡致しますので、今日は一まずご帰宅下さい」 「…?」…ぼんやり。 「その際、お手元にある茶封筒は、必ずお持ち帰り下さいね。中に大切な書類が入っていますので、帰宅されてから、じっくり目を通しておいて下さい」 「あ、はい」 「では、もう歩けますか」
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

412人が本棚に入れています
本棚に追加