(九)回想から、現実へ。

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向井は付けっぱなしのノートパソコンのそばに近づき、こう切り出した。 「さぁ、まずは…君のお隣さんがしていたゲームとやらを出してもらおうかな」 「あっはい、デスクトップに取得しているんですが」 尚人はパソコンの前のイスに腰掛けて、画面をのぞき込んだ。 「あれ、消えてる?藤野さんがどっかにやったのかな…」 尚人は妙だと思って、パソコンの画面に浮かぶゴミ箱の中も開けてみた。 ところがそこにもなかったので、彼は焦った。 「おかしい。どうしてないんだ。本当に、僕、ここにそのゲームを出しておいたんです。信じて下さい。僕はやらないと決めていたんだけど、藤野さんが暇つぶしにしたいって言ったもんだから、それでデスクトップに貼り付けておいたんです。なのにゴミ箱にすらない」 「その藤野くんも同じことを言っているようだし、何も君を疑ったりはしていないよ。確かPCのメールアドレスの方に送られて来たんだよね。受信データは残っているかい」 「はい」
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