(九)回想から、現実へ。

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「ちっめんどくせ」 尚人の口から、つい本音が飛び出した。 すると若手捜査官の谷岡佑介は、それを聞き逃さなかった。 「なんだと。もういっぺん言ってみろ」 尚人はふてくされて、プイと横を向いた。 「お前、何もやましいことがないなら、別に構わんだろうが」また谷岡。 「分かりました。じゃあ、押収してもらって結構ですが、その代わりに同じメーカーの、まったく同じタイプのパソコンを、代用品として用意して下さいね。セットアップもしてくれる、二の丸ムセンで買ったから、そこに電話して、今すぐ同じのを、持って来てもらって下さい」 「図々しいヤツだ」 谷岡がそう言うのを聞いて、尚人は堪忍袋の尾が切れた。 「図々しいのは、どっちだ」 彼は、小声で言い返した。
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