(九)回想から、現実へ。

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「聞こえてるぞ」と、また谷岡。 「こら、祐介。もういい加減にしないか。いつまでやっているんだ。お前は少し黙ってろ」 向井がイライラして、無理やり収拾をつけようとした。 尚人は、仕方なく向井に言われた通り、しぶしぶ友人知人のアドレスなどをUSBに移して、送信したメールや保留メールもすべて削除した。 谷岡という若い方が、京都府警に連絡している。 ノートパソコンの代用品となるものを手配してくれているようだった。 機種などが合っているか、耳をそばだてて聞きながら、尚人は少し安心した。 「請求書はこちら持ち。夕方には配達してくれるそうです」 谷岡は、向井にそう報告した。 「桐生くん、これでいいかな」 尚人は深いため息をつきながら、小さな声で「ハイ」と一言、答えた。
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