(九)回想から、現実へ。

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ふん。それじゃあ、自分達で勝手に調べればいいじゃないか。 尚人は、急にムカムカして来て、口に出してどんなにそう言いたかったことか。 けれど向きになればなるほど、逆にもっと怪しまれて、就職先の企業側に迷惑がかかるのでは… 尚人は冷静にそう判断して、この時、至って落ち着いた態度で、企業の名前を上げた。 「ゲーム機メーカーの天授堂です。ご存知でしょ。有名だから」 「ああ、そうなの。さすがだね。京都一の企業じゃないか。いいところに決まって、それは良かった」 「えっと、その~今日のことですが、誰にも何も言わないでもらえますよね。以前に京都府警で事情聴取されたことだって、僕、人事の人とかに報告してないんです」 「大丈夫だよ。それは言う必要ないことだからね」 「だけど、それなら、なぜ、今お尋ねになったんですか。企業の名前を知って、僕のことを根掘り葉掘り聞きに行ったりしないで下さいよ。第一まだ働いてもいないんだし、内定してるってだけで…」
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