(九)回想から、現実へ。

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「東京では、首都をパニックに陥れたウィルスのことで、大騒ぎしているから、これまでに地方で起こっていたよく似た事件が、ないがしろにされつつあるんだ。でもね。ここ数年、時期も地域も、バラバラで起きていた地方の侵入ウイルスの事件は、すべて犯人が、東京の事件を起こす前の予行演習に使ったものだと、私はそう考えているんだよ」 なんだって?物騒な話になってきたぞ。 「犯人は、コンピューターに侵入するウィルスについて、捜査の進み具合や、警察の反応、それに利用された学生達が、どんな処分を受けるか。今まで、じっと観察していた。君らは試しに使われて、データを取られていた。いわば実験材料で、そして先日、ついに東京での本番が実行された…」 「じゃあ、僕や地方の学生達は、東京の事件を起こすための練習に使われたって。そういうこと」 向井はうなずいた。 「少なくとも、私はそう考えているんだ」
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