(十一)東京での再会

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当事者でない、大らかで気のいい藤野さんは、僕の代わりに恐る恐る爆狼怪人に空メールを返信してくれた。 相手のアドレスが実際に存在するものなのか確かめるつもりで、怖々送ってみたのだ。 しかし、返って来たのは、宛先不明でメールが届かないと言う規定通りの連絡事項だけ。 いくじのない僕は、向井さんに報告するべきか、それとも京都府警にこのメールを持参しようかと、その日は一日中悩んで食欲もなく、夜も寝つきが悪かった。 やっとうとうとしかけたのは、明け方近く。   僕はなぜかその時、河原にいた。目の前を、どういう訳か、あの乞食のじいさんが走っている。 誰かに追われているようだった? ダメだ川に入ったら、あんたは凍死するんだ。 僕は必死でそう叫んでいたが、相手には届いていないようだった。
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