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僕は、過去の栄光と最近の挫折を振り返りつつ途方に暮れて、大学から駅の方へと歩いていた。
川の土手を気晴らしに散歩でもするか。
そう思って、河原におりて行くと、橋の下に、机とイスを並べて座っている白髪の老人がいた。
近づいて、何げなくその男を見ると、無精ヒゲに、乱れ髪。
つぎはぎだらけの古めかしいこげ茶色の着物を着ていて、手には黒い手袋をはめていた。
乞食に違いない。
僕はそう思って、老人を哀れみ、つい同情してしまった。
普段なら、無視して通過するところだったが、この日はなぜか気になって、立ち止まった。
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