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老人は僕が立ち止まると、がたつく机の引き出しから年代物の拡大鏡を取り出して来て、その拡大鏡で上から下まで、まじまじと僕を眺めはじめた。
この男、昔、占い師でもやっていたのだろうか?
白髪の老人は、拡大鏡で僕の顔を凝視すると、その後何度も何度も深くうなずいてこう続けた。
「その慈悲深さと千里眼の相を持ち合わせているお前さんに、一ついい物を授けよう」
授けようって、あのなぁ、あんたは乞食だろが。
僕は内心そう思っていた。
すると老人は、着物のたもとから、きちんと畳まれたおみくじのようなものを取り出して来て
「さぁ、これをしんぜよう」と差し出した。
「いいよ。じいさん、そんな申し訳ない」
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