アースジェット

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 やばい。赤い悪魔が追ってくる。連邦軍もクソもないが、赤いやつが追ってくる。 「このゴキブリめ、早く死ぬがいいわ! ふはははは!」  そう言われながら俺はだんだん食卓の隅へ追いやられる。いや、これはもう非常にまずい。  やはりお菓子の缶の中に入っていたのがまずかった。どうせこんなしけた煎餅など食べに来ないだろうと高をくくっていたのだ。油断したのだ。 「ちょろちょろ逃げやがって!」  男の右手に握られているのはアースジェット。こちらのスペックを考えると下手したら一撃だ!  ちくしょう! こいつはマジでやばい!  焦る俺に反し、男はアースジェット片手に不適に微笑む。いやいや、虫一匹相手にそんなガチにならなくてもいいじゃないか。少し考えてもみろ。俺たちにツノをカスタムしたら、たちまちカブトムシだぜ? 何千円で売られているようなやつもいる種族にはや変わりするんだぜ? 悪徳商売に持って来いじゃないか。 「どこからともなく沸いて出てきやがって! ぶっ殺してやる!」  そりゃあないぜ、とっつぁん。お前さんが食べ残しやお菓子のカスをほったらかしにしといたから俺らがいるんだぜ? 曲解すれば、あんたから生まれたも同然なんだ。どうだい? そう見るとかわいく見えないこともないんじゃないかい? いや、この際わが子のように接しろとは言わない。贅沢は言わんから普通のペットとして接してくれてもいいんじゃないかな。お前さんたちは俺たちを毛嫌いするが、いったい何がいけないんだ? さっぱりわからん。むしろ、必死に這いつくばって生きている姿なんか健気なものだと思うのだがなあ……うわっと! 「ついに追い詰めたぜえ……うひひひひひひっ!」  完全に悪役的なセリフをお吐きになった男は、アースジェットのノズルを俺に向ける。
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