*想い人は最強剣士* 

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  『新撰組』 それは理羅の通う高校の不良グループのひとつである。 土方を長とした、沖田などの数名の幹部たちを中心に構成されている。 幹部たちの腕は確かなもので、彼らが全員揃えば戦っても勝てるわけがないなどと言われている。 何よりも強く、何よりも高い。 一般人には何があっても危害を加えないが、ここらの不良のほとんどは名前を聞くだけで怯えるほどの最強集団。 一度逆らえば、徹底的に潰される。 彼らを倒して自分たちがトップに立とうとする馬鹿や、数さえ揃えれば勝てると思う馬鹿もいる。 「新撰組……?」 これは何の運命なのか。 何故自分ばかりが巻き込まれるのか。 「ええ」 風紀委員長をやっているのは、それさえ制しておけば大丈夫だと、そういうことだろう。 実際、彼らにそんなこと注意出来る人なんていなかった。 教師も含め、誰もが彼らの闘争に巻き込まれたくないと、関わるまいとしている。 僕らと住んでいる限り貴女も狙われるかもしれませんが、と沖田が言う。 正直、そんなことはどうでも良い。 それよりも、ただ彼らは何をしているのかが不安で仕方なくて。 なんでそんなことをしているのか気になって仕方なくて。   「僕は行きます」 「沖田さん!!」 再び歩き出した沖田を、理羅が引き留めようと声を掛けても振り返らなかったので、走って追い掛ける。 沖田は理羅の腕を掴み、親が子供に諭すように理羅の瞳を見ながら言った。 「貴女は人通りのあるところで待っていてください。直ぐに誰か来るはずですから」 「っ」 (沖田さん、ごめんなさい。……でも私はどうしてもあなたを行かせたくない) ごめんなさい、と理羅が言った直後。 訝しげに理羅を見た沖田が目を見開き、理羅に寄りかかる。 理羅の右手が、沖田の鳩尾に深く入り込んでいた。  
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