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そいつらは暗闇と共にやって来る。
適度な間隔で黒い革靴を鳴らし、真っ黒な出で立ちで現れる。
「相変わらず緊張感のない格好だな」
背の高い男が言う。
黒のカッターシャツに黒のジャケット。漆黒のコートからは黒いツータックパンツが見える。
スーツ姿だというのに真摯というよりは不気味という表現が似合う男。
その男の問いに隣を歩く男が答える。
「緊張感ならあるさ。私は夜しかネクタイをしない」
見れば男の胸には黒地に濃い黒と白のストライプネクタイ。
結び目の下にはちょうど細い指輪一つ分がはまりそうな
穴のある銀色の指輪。
「当然だ。ネクタイすらしない男とは組めん」
論外だとでも言うような口調の男を見ると
グレーのストライプのネクタイに細い銀色の指輪が光っている。
二つを重ね合わせれば見事に一致しそうなデザインだ。
「服装なんて個人の自由だろう。ある程度の品位があれば
どんなものを着ようが文句は聞かない」
穏やかな口調とは逆に突き放した感じのする言葉。
だがスーツ姿の男は唇に弧を描いて軽く鼻を鳴らす。
「文句ではない。感想だ」
到底感想とは思えない口振りだったが、
この男にとってはそうであるらしい。
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