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小刻みに手が震える。目の前にいる騎士に喰らい付かないよう、歯を食い縛る。
そんな自制の聞かない体を落ち着かせようと、「この男のせいではない」と理性が本能を押さえつける。
「さ、さあ?俺たちもたった今騎士団本部からの伝達で知ったばかりで…。」
門番がそう話す隙に、アルバはこちらに駆け寄ってくる人の気配に気付く。フィオレニアは「花の民」と呼ばれ、文字違いではあるが嗅覚が優れていた。
アルバのその敏感な鼻が、先ほどまで薫っていたその者の甘い香の薫りを呼び覚ましていた。
「アルバ殿!」
走り寄ったのは先程の眷族家に仕える若き騎士の一人、カインだった。
流麗たる栗色の長髪がよく映える、まるで乙女のような顔立ちの少年だ。
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