絡まり捨てた赤い糸

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8:00。お店の外にある札を〝open〟にし、与えられた業務をこなしながらマスターとゆったりおしゃべりをする。 というのも開店早々にやってくるようなお客様はいないからだ。 常連さんがちらほらやってくるのは大体9時~10時くらい。 大体が落ち着いた雰囲気のおじさんたちだからそんなに気負うことはないし、たまに絡んでくるようなお客様がいてもマスターがさり気なくお客様の相手を代わってくれる。 カランカラン。 「はぁい、いらっしゃいませー…ってなぁんだ、龍ちゃんかぁ。」 もうすぐ9時くらいかな、という時間になって漸く一人目のお客様がやってきて、マスターがにっこりと営業スマイルを振りまきかけるもすぐにそれを止めてしまった。 入ってきたのはいかにも仕事のできる男って感じの籐堂院さん。いわゆるマスターの恋人だ。仕事の合間をぬってはマスターに会いにくるのだけれど、いつもマスターに邪険にされたりからかわれたりしている…。 「なんだとはなんだ、なんだとは。せっかく俺様が徹夜明けに会いに寄ってやったってのに…」 今日も今日とてマスターに鬱陶しそうにあしらわれ、そう不満げに唇を尖らせながらカウンター席にどかりと座ってマスターを恨めしそうに見やる籐堂院さん。 でもきっとそんな反応はマスターを喜ばせるだけだと思うんだよね。 前にどうして恋人同士なのに籐堂院さんの扱いがひどいのかって聞いたら、 龍ちゃんのふてくされた顔ってかわいいじゃない?それに俺がたまに構ってあげるとすごく嬉しそうにするとこなんか、おっきいわんこ調教してるみたいで面白いんだよね、 って言ってたし。  
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